こんにちわ、キョロスケです。週末は映画館に通い、週に2、3本のペースで新作映画を鑑賞することを趣味としている会社員です。
社会人となると、いきなり遠方に異動など、思わぬ日常の変化が起きますよね。
異動だと本人自身の変化は少ないですが、交通事故や病気によって、元の日常に戻れない程の変化が舞い込む人も少なからず居ます。
その時、人は前の生活に戻れる(回復)出来ると希望を抱くものだと思いますが、それが叶わないと知った時、どうすればよいのでしょうか?
今回は、ミュージシャンとして生きてきた男性が突如、難聴者となった作品「サウンド・オブ・メタル」の感想となります。
記事の前半は、あらすじ、登場人物や見所など、後半は、本作の感想を記載しています(感想は、ネタバレを含む場合がありますので、ネタバレNGの方はご注意下さい)。
あらすじ/STORY
突如難聴になったドラマーのルーベンは、一緒にバンドを組む恋人ルーに難聴者のコミュニティに連れていかれる。難聴であることをハンディとして捉えていなコミュニティの人々と過ごしながらも、その現実を受け入れることの難しさに直面するルーベンは、自分の人生を前に進めるために、ある決断をする…。
人生の挫折・再生を描きながら、その主人公の人生を疑似体験できる秀逸な感動作。
(公式サイト(https://www.culture-ville.jp/soundofmetal)より引用)
登場人物/キャスト/CAST
ルーベン(リズ・アーメッド):突如聴覚を失う主人公。恋人と組むバンドのドラマー。二人でツアーを回る平和な日常を送っていた。
ジョー(ポール・レイシー): 聴覚障害者のコミュニティのリーダー。難聴になった主人公ルーベンを温かく導こうとする…。演者本人が聴覚障害者の両親の元で育ったため、ジョーがルーベンに接する態度、セリフの説得力が半端ないです。
ルー(オリヴィア・クック): 主人公ルーベンの恋人であり、バンドのボーカル。突然難聴となったルーベンを支えようと努めるが…。
リチャード(マチュー・アマルリック): 主人公ルーベンの恋人ルーの父親。娘のルーを深く愛する。
ダイアン(ローレン・リドロフ): コミュニティで子供達の世話をしている女性。見た事あるなぁと思ったら、エターナルズにてマッカリ役で出演されていましたね。
(公式サイト(https://www.culture-ville.jp/soundofmetal)より引用)
作品の見どころ 不条理?突然の難聴
突如、降りかかる聴覚障害という状況
ドラマーとして生きてきたルーベンは、突如聴覚障害という変化が自身の体に起きます。
本作では、ルーベンに起きた変化をニコラス・ベッカー氏の手により、サウンドデザインされて演出していきます。
この普段に馴染みのない音の世界に、一気に引き摺り込まれていく感覚が、ルーベンにとっては後戻りが出来ない変化という状況に注目です。
変えるべきものは何なのか?
ルーベンは、知人の紹介に導かれ、支援コミュニティのジョーと出会います。
彼は、ルーベンにコミュニティが聴覚障害を治すものではなく、障害とどうやって付き合っていくのかと、自分自身の変化を受け入れ、自身の生き方を模索する場である事を告げます。
またジョーは、ルーベンにある課題を授けます。
この課題の意味や答えが何を意味していたのか、ルーベンだけでなく観客にも自身の生活を省みるキッカケを与える課題にも注目です。
それでも日常に戻りたい
ルーベンの恋人であるルーは、ルーベンの突然の変化にも怖気付かずに、サポートしようと試みます。
ルーベンもまた、元のミュージシャンとしての生活を取り戻そうと足掻きます。
現実は、そんな二人を無情にも突き放します。
彼らが、突然の変化を目の前にし、どのように変化していったのかも見どころです。
感想(以下、「ネタバレ注意」) 現代版のカフカの「変身」と感じました
理不尽な変化
ルーベンには、過去にドラッグに手を染めた過去があります。
また、日頃大音量の元に曝されるメタル系ミュージシャンという事もあり、いつかこの日が来るかもしれなかった障害に出くわします。
しかし、当の本人にとっては、晴天の霹靂となる変化です。
しかも、医者からは急速に悪化しており、元に戻らないことを告げられてしまいます。
僕は、このルーベンの置かれた状況を観ていて、カフカの「変身」を想起しました。
変身では、主人公のグレーゴルはある日、自身の体が巨大な虫になっていることに気づくという不条理な展開から始まります。
そして一家の稼ぎ頭であったグレーゴルは、これからの仕事をどうしようか等、思案しますが、一緒に住んでいる家族から傷つけられてしまい、自室に引きこもる生活を余儀無くされてしまいます。
この突然の変化、元に戻らない生活となったグレーゴルの状況とルーベンの状況が僕には被ってみえました。
本作では、グレーゴルと違い、ルーベンは聞こえなくなったことで得られた世界を発見して終わります。
そういった意味で、現代版の「変身」だなぁと感じました。
不可逆の変化
ルーベンに降りかかった変化は、医者にも元の生活に戻れないと示唆されたように、不可逆の変化でした。
ルーベンは、それを身を以て理解するまで、元の生活に戻れるはずだと足掻きます。
観ているこちらも、ルーベンの目線で自身の変化が信じられないと彼の足掻きに付き添います。
この一連の流れ、シーンをルーベンが焦燥する様子を観せる事で、僕はルーベンが感じているであろう恐怖感を強く共感しました。
ルーのサポート
ルーベンの恋人であるルーは、距離を取ろうとするルーベンを諌めながら、彼を支えます。
しかし、ルーベンがコミュニティに入り、彼との接触が禁じられてしまいます。
物語の後半でルーベンは、ルーと再会しますが、彼女との会話の中で元の生活に戻れない事を思い知ります。
手術により、疑似聴覚を取り戻したルーベンですが、新しい生活に対応してしまったルーにとっては、ルーベンとの元の生活は重荷に感じたのかもしません。
このあたりの展開も「変身」のグレーゴルとその家族の関係の変化に通じるものがあると感じました。
支援コミュニティ
ルーベンの様に聴覚障害を持った人々を受け入れ、支援するコミュニティの存在が登場します。
様々な支援を受ける事と引き換えに外部との接触を絶つなど、非常に厳しい制約がある様な描写でした。
ルーベンの様に、外での生活を知っている者としては、生活が安定して来ると外に向かいたくなる気持ちが共感できるため、良くも悪くも非常に閉ざされた環境にみえました。
以上が「サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜」に関するキョロスケの感想となります。つらつらと拙い感想記事を紹介させていただきましたが、今回も最後までお読みくださりありがとうございました。